甘い疑惑の王子様
驚いて目を瞑った。
――チュッ
と優しい音をたてて
額に柔らかい感触を感じた。
『なっ……』
一気に顔が赤くなり
動揺する。
「はは♪本当可愛い。それじゃあまたね、真奈美」
『え…まっまた会える!?』
私に傘を渡して
車に乗ろうとする彼に
私は声を張った。
彼は動きを止め
驚いたようだったが
いつもの笑顔を返してくれた。
「会えるよ。真奈美が望むなら僕は会いに来るよ」
そう言って車のドアが閉まり
彼を乗せた車が去って行った。
雅之さん……
去って行く車を見えなくなるまで見送り
私の心は再び彼で満たされた。
また会える……
そう思っていた私の期待は
あの頃のおとぎ話のように
儚く散る事になるなんて……
思いもしなかった。