甘い疑惑の王子様
時計を見ると
七時を過ぎている。
『はぁ…梨子は何してんだか』
「先に食べちゃっていいの?」
悲しそうな顔で私を見つめる涼。
いつもは一緒に食べていた夕食も
いつの間にか梨子の姿だけなくなった。
最近帰ってくるのは
十時を過ぎるし……
『大丈夫だよ。食べな』
「はぁい。いただきま~す」
何を言っても、私の言葉は
梨子には届かない。
梨子の分の料理を作っても
口にすらしてくれなくなった。
「相変わらずうめぇ!」
「お姉ちゃんのハンバーグは世界一なんだもんね!」
『涼ってば』
こんな家庭でも食卓には笑顔がある。