甘い疑惑の王子様


傘も持たずに裏門から
よろよろと歩き出た。


どこへ行くわけでもなく
このまま教室には戻れない。

ただそれだけが
頭の中で回りだす。


寒い……


意識も朦朧としてくる。



それでも私の隣を人が通り過ぎるたびに
私を避けるのを感じる。



あぁ…私汚いんだな…


途中力尽きるように
目の前の電柱に手を付いて体を支えた。


や…ばい
立ってられない。


雨の勢いが私の体力を更に奪う。


足に力が入らない。



そんな時
雨が当たるのを感じなくなった。


不思議に思い
残る力を振り絞り顔を上げた。


視界がハッキリとしない。


でもそこには確かに人が居て
私に傘をさしていてくれた。



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