甘い疑惑の王子様
だ…れ?
声にならない…
「風邪引くよ?」
透き通るような綺麗な声が
雨の音と共に降ってきた。
『……ぁ…』
―――貴方はだれ?
その言葉も力ない私には
発する事すらできなかった。
「……おいで。僕の肩に掴まれる?」
私と視線を合わせるために
腰を落としてくれた。
え…?
その言葉がハッキリと聞こえると
ボヤけていた視界もハッキリとする。
綺麗なスーツを身にまとい
品のある容姿の男の人。
透き通る声の持ち主は
なんともいえない綺麗な顔つきで
私に手を差し伸べていた。