甘い疑惑の王子様


車の中は見るからに高級で
テレビなんか付いちゃってる。


私が座る事でこの椅子も汚れ
申し訳ない気持ちでいっぱいだった。



『…あの』

「なに?」


走り出した車の中で
私は口を開いた。


『私…学校に戻ります…見ず知らずの方といきなり食事なんて……』


声が小さくなる。
そのぶん申し訳ない気持ちが大きくなる。

「気にしないでって言ってるじゃん。それにその格好で学校戻るの?」


そう言って彼は私を見た。

靴も制服も髪も
全てがぐちゃぐちゃ……


「…ふふ」

『え?』


私が自分の姿を再確認していると
彼が声を漏らして笑った。



< 65 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop