甘い疑惑の王子様
「僕の友人です」
「友人だと?」
彼の父は目を細めながら
私を再び見た。
『は…初めまして。佐野真奈美と言います……』
焦った私は
自分の名前を名のった。
「今日の事はもう仕方がない、お前は橘さんの所へ今すぐ行け」
私の話を聞いていないのか
彼の父は話を元に戻した。
「しっしかし「黙れ!お前は今すぐに支度をして行け」
彼の言葉に耳を貸さず
部屋中に響く声。
彼の顔は今まで見た事ないくらい
歪んでいた。
「……分かりました」
彼は顔を俯かせ
小さな声で返事をした。
「佐野さんと言ったな」
『――!?はっはいっ!』
「井上に送らせるので、今日は遠慮願おう」
『はい…』