甘い疑惑の王子様
「信也にぃちゃ~ん!」
部屋から飛び出してきた涼の声に
私とシンちゃんの体が咄嗟に離れる。
「涼!」
それを見かねた梨子が
慌てて涼を追いかける。
私……多分顔赤い。
それが分からないように
私は洗い物を始めた。
背中からは
何事もなかったかのように
涼と遊ぶシンちゃんの笑い声が聞こえる。
なんだろ……
このモヤモヤ。
自分の中で何か突っかかるものを
感じながら手を動かす。
いくら考えても
その正体は分からず
洗い物を終え
シンちゃんと涼と梨子の輪に
私も加わった。
気付けばその考えも
忘れていた。
シンちゃんはそれっきり
またいつものように傍に居てくれるようになり、いつもの日常に戻った。