俺はお前だけの王子さま
その方が良い―…
ムカつくけど。
かなり不本意だけど…
俺は最終的には渡瀬が良ければ
良いっつうか。
自分の気持ちを押し付けるのは苦手だし、
なにより押し付けて渡瀬が悲しむ顔をみたくなかった。
本来俺も、本当はヒロキだって
出る幕じゃない。
「え?なんで徳井くん?」
夏木は大きく首をかしげた。
「はぁ?だって両想いだろ」
「え?なんで?」
渡瀬の親友の癖に聞いてないんかよ…
「だって…徳井の気持ちはもう明らかだろ。渡瀬だって…渡瀬を見てたら誰が好きなのか分かるって」
と、ヒロキが言ってた。
「…………」
何も言わない夏木。
周りで男女のはしゃぐ声と
波が打ち寄せる音が俺たちを包む。
なぜか少し沈黙が流れた。