俺はお前だけの王子さま
表情が見えないまま
水梨くんは続ける。


「下らない付き合いさせて…
マジでごめんね。俺…春馬に負けたくなかったんだ…」


「え…?」


「愛子ちゃんの初めての彼氏にこだわったの…俺のしょぼいプライドのせいなんだ…」


「………」


「俺…春馬に負けっぱだから…」



そう言うと
水梨くんはさらに体を丸めてしまった。


小さな子供みたいな水梨くん…


なんでそんなに王子くんと
対抗するのか分からないけど…


苦しんでいる水梨くんを見て
私も胸が苦しくなった。


切ない沈黙の中で

私は気付くと自然に水梨くんの頭に手を伸ばしていた。


海水で少しパサついた
薄茶の柔らかい髪を優しく撫でる。


「大丈夫だよ…」


「………」


「水梨くんは水梨くんだよ?」


「………」



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