俺はお前だけの王子さま
「あっちが本家。俺が住んでるのは離れだから。」


俺は同じ敷地内にある
離れを指差す。


離れと言っても渡瀬のボロアパートよりは多分大きい。


「…なんで離れなの?」


日本庭園の池のコイを見ながらようやく渡瀬が声を出した。


「あ―…親あんま居ないから。1人じゃ無駄に広いし離れのが住みやすいし。」


「そうなんだ…」


戸惑う渡瀬に俺は付け加える。


「寂しいとか心配してんだろ?別に慣れたことだから心配すんな。」


俺の言葉に渡瀬は少し頬を染めた。




離れの玄関を開けると
山ちゃんが旅館の女将風に正座で頭を下げていた。


来客に対して
山ちゃんはいつもこうだ。


「ようこそおいでになりました」


「山ちゃん久しぶり~♪会いたかった~」


そんな光景になれたヒロキは
笑顔でズカズカと入っていく。


入り口で固まる渡瀬と夏木。


「お前らも入れって…」


俺が催促すると2人はおずおずと入ってきた。



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