俺はお前だけの王子さま
山ちゃんの提案
気恥ずかしい雰囲気を残し
俺と渡瀬は離れに戻った。
「渡瀬…なんか飲む?」
リビングに入ると俺は冷蔵庫から炭酸水を出した。
なんか喉がカラカラだ…
とぷとぷ…
とグラスに注ぎながら
そわそわとソファーに腰をかける渡瀬に目をやる。
「あ…大丈夫だよ」
「ん」
俺はグラスを片手に、そのまま渡瀬の隣に座った。
ソファーに座ると渡瀬と目があった。
「………」
「………」
俺はゆっくりと渡瀬から目線を反らした。
ダメだ…
なんか直視できね―…
その時――
ちょうど山ちゃんがリビングに入ってきた。
渡瀬をみて、微笑みながら頭を下げる山ちゃんに
渡瀬も小さく頭を下げる。
渡瀬は指先で革張りのソファーを触りながら
少し緊張した様子で山ちゃんに話し掛けた。
「あの…ほんとに素敵なお屋敷ですね。」
俺はカラン…と炭酸水に口を付けながら、横目で渡瀬を見た。
渡瀬なりに多分、山ちゃんに気を使ってんだろうな…
だけど
「あのさ、その感想は…山ちゃんじゃなく俺にするもんだろ?」
あくまで山ちゃんは家政婦で
この家は俺の家な訳で。
山ちゃん的に、んな事俺を前にして言われても困るだろ…