俺はお前だけの王子さま
夕方になり


俺は渡瀬を、ヒロキは夏木を
それぞれ送って帰ることにした。


夕日色に染まった渡瀬の横顔に目をやる。



「…あんま深く考えんな」


俺の言葉に
渡瀬は歩きながら俺を見上げた。


「えへ、緊張してるのバレるよね」


渡瀬はゆるく笑顔を作る。


「…でも私、楽しみなんだよ。山田さん何教えてくれるんだろ?」


「…………」


「あと王子くんのご両親にも…やっぱりきちんとしたとこ見せたいし」


「………」



ビビッてるくせに…

なんとか前向きに頑張ろうとしている渡瀬。


そんな渡瀬のまっすぐな背中や凜とした表情を見て、


俺は何も言えなかった。









渡瀬のアパートの前についた。


「今日は楽しかったよ。ありがとう。明日はお迎えとかいらないよ」


向かい合って明るい笑顔を見せる渡瀬。



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