俺はお前だけの王子さま
―――…


朝食を終えた俺は、親父の向かいのソファーに腰をかけた。


「高校は楽しいか?」


とっくに新聞を読み終えた親父は日本庭園を眺めながら

穏やかな顔で聞いてきた。


「…まぁ楽しい。」


「そうか。父さんも仕事が楽しいよ」


祖父の代で一度廃れかけた王子家は、親父の代でまた急成長を遂げた。


「…なんかまた新しい事業始めたんだってな」


「ああ。」


親父は中指で眼鏡をあげると
俺を見た。


「走ることを止めたら人も企業も終わりだからな。大きくなっても常に新しい挑戦は必要だ」


「…わかってる」


俺の回答に親父は満足そうに
微笑み頷いた。


「新事業の基盤を作りに、今はアメリカにいるんだが」


「あぁ…」


「今後は春馬にそこを譲ろうと思っている」


「…………」


親父は穏やかに俺を見つめる。



「卒業したら、あちらの大学に通いながら、お前が新しい事業を軌道に乗せるんだ。」



< 329 / 558 >

この作品をシェア

pagetop