俺はお前だけの王子さま
「あ、渡瀬さん」
ヒロキが渡瀬を見つけて笑顔で歩み寄ろうとした
が―…
一瞬ヒロキの顔が険しくなった。
ん?
なんだ…?
俺が渡瀬の方を見ると
渡瀬の隣で爽やかに笑う男の姿があった。
あいつ確か…徳井だっけ?
球技大会のバスケの試合で
やりあった事がある。
ムカつく試合だったから
なんとなく覚えていた。
「渡瀬さん、王子連れてきたよ」
爽やかな笑顔とは対称的に
渡瀬と徳井の間に強引に割り込むヒロキ。
露骨すぎて逆にすげぇ…
少し驚いた顔で渡瀬がヒロキを見上げた。
「あ、ありがとう」
「うん」
ヒロキの存在で
渡瀬と徳井の会話は途切れたらしい。
「…今日は相手が来たんだな。
なら俺は失礼するよ」
徳井は渡瀬に微笑みながら
腰を上げた。
「え?ここに居ればいいのに」
「ううん、俺もクラスの相手が来るのを待つよ。」
「そう?じゃあまたね」
「ああ」
徳井は渡瀬に微笑んだ後
ヒロキと俺を見てから
少し笑った。
「真面目にやれよ?」