俺はお前だけの王子さま
渡瀬 愛子・side

どうして?

扇風機が回る音


しゃわしゃわしゃわと、遠くで鳴く蝉の声


鳴らない風鈴と


時折、王子くんの息づかいだけが聞こえる。


王子くんの唇は燃えるように熱い。


自分が自分じゃないみたいだ


「渡瀬…」


私を呼ぶ、王子くんの切ない声


上に移動した王子くんの額の汗がぽとりと私の頬に落ちた


汗で濡れた王子くんの髪が私の顔にかかる。


王子くんの熱っぽい視線


暑さと恥ずかしさとで頭がクラクラする。


どうしよう…

本当にこのまま…?



ふと王子くんの動きが止まる


え…?

なに?


「…………」


視線が合うと王子くんは小さく微笑んだ。



王子くんはそのまま私の鼻にキスを落とすと


途中まで開かれた私のブラウスのボタンを器用に直した。



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