俺はお前だけの王子さま
「………」


私は課題を続ける気分じゃなくなり鉛筆を置いた。


「もう寝ようかな…」


残業のお母さんの帰りを待つつもりだったけど…



寝室の様子を伺うように奥の襖を少し開けると


暗い四畳半で勇気が寝ている。


サッカーの試合でくたびれたのか、すごい寝相の勇気。


開いた襖から伸びた光が勇気の顔にかかる。


口をあけてる勇気の寝顔を見ると少し心が和らいだ。


やっぱりお母さんを待ってよう


ゆっくりと襖を閉めると
私はもう一度ちゃぶ台の前に座った。


扇風機のぬるい風


ふと斜め横の畳に目をやると

そこは今日、王子くんに押し倒された場所だった。


夕方のことを思い出し
トクンと胸が苦しくなる。


そっと指先で畳に触れると
王子くんが恋しくなった。


「…………」


私はリモコンを取るとTVをつけた。


ボリュームを下げて内容がわからないドラマを見る。



夜風に風鈴がチリンと鳴いた。


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