俺はお前だけの王子さま
ぼろアパートの前で車は静かに停められた。


夜の暗闇の中、漆黒の高級車が場違いな程に浮いている。


エンジン音が止められた。


野良猫の声が響く静かな夜。


時刻はすでに日付を越えようとしていた。


渡瀬の家の電気は消えている。


俺は遠慮がちにチャイムを鳴らしてみた。


カチカチ…

鳴らないチャイム


そういえば

この家のチャイムは壊れてんだった…


「………」


クーラーに床にチャイムに…
いい加減、壊れ過ぎだろ。


仕方なく俺は渡瀬の携帯に電話をしてみた。



少し寝ぼけた声の渡瀬は

俺が来た事を伝えると驚いた声ですぐに出ると言った。



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