俺はお前だけの王子さま
カチャ…


しばらくして

静かに開かれたドアから渡瀬が出てきた。



パジャマ姿の渡瀬は俺を見て
少し戸惑った顔をしている。


そんな渡瀬に


「久しぶり…」


俺が小さく言うと

渡瀬の瞳にはみるみるうちに涙がたまった。



「あれ…?ごめ…」


無理やり涙を抑えて笑おうとする渡瀬。


「………」


渡瀬の強がりは知っているのに


渡瀬をこんな表情にさせるまで
渡瀬がどれだけ寂しかったのか気付けなかった俺。


俺はつくづく馬鹿だ…



「う~~~…ごめ」


必死で涙をこらえる渡瀬。


華奢な渡瀬の肩は小さく震えていた。


俺はそんな渡瀬の手を引くと
自分の胸に抱き寄せた。


「悪かった…」


優しく抱き締めながら俺が呟く。


「マジで悪かった」


俺の胸に顔を埋めた渡瀬は首を小さく左右に振る。


「来てくれて…嬉しい」


かすれる渡瀬の声。


「ありがと…」


渡瀬の涙で胸元が濡れていく。




俺と渡瀬はそのまま、きつく抱き締め合った。





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