俺はお前だけの王子さま
「…え?」


渡瀬母の発言に渡瀬は目を丸くした。


俺も予想外の言葉に少し驚く。


良かったらうちにどうぞじゃなくて…俺んち?


「え?お母さんなんで?」


渡瀬がテンパり気味に聞く。


「だってうち暑いし…勇気も寝てるし狭いし、ゆっくり話せないでしょ?」


「そりゃ、そうだけど…」


「それに愛子最近ずっと寂しそうだったから…やっと会えたんだし」


「………」


渡瀬の顔がほんのり赤くなった。


渡瀬の母は俺を見た。


「王子くんのお宅さえ良ければだけどね。こんな時間だし…」


俺は頭をかく。


「いや、俺んちは良いですけど…」


俺の言葉に渡瀬はまた目を丸くした。


「え?だってご両親いるしまだ挨拶も…」


「いや、うち普通にまだ起きてるだろうから別にいい。」


あの両親は…多分俺が帰国して帰ってくるのを待ってるはずだ。


「ほ…ほんとにぃ?え…でもどうしよう」


いきなりの展開にテンパる渡瀬。


「とりあえずパジャマのままでいいけど明日の制服とかは持ってこいよ」


「えぇ?!」



こうして俺と渡瀬は、渡瀬母に見送られながら我が家へと向かう事になった。



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