俺はお前だけの王子さま
俺の家に向かう車中


最低限の用意をカバンにつめた渡瀬は俺の隣で緊張ぎみだった。


「おい…大丈夫か?」


「や…あまり大丈夫ではないかもです…」


パジャマからブラウスとスカートに着替えた渡瀬。


渡瀬は緊張しすぎているのか
なんだか息が苦しそうだ。


「…ちゃんと息吸えよ」


「だって…」


渡瀬は少し困った顔で俺を見る。


「王子くんの両親に会うのも緊張するし…」


「…あぁ」


渡瀬は俺を見つめる。


「それに…王子くんの話が何なのかも怖い…」


「………」


暗い車内で渡瀬の潤んだ瞳が切なく揺らめいた。


「その事だけど…」


「うん…」


「………」


今…話すべきなのか?


俺はためらいがちに渡瀬の膝の上に手を伸ばすと、静かに渡瀬の手を握った。


渡瀬はごくりと俺を見つめている。


俺はひとつ息を吐くとゆっくりと渡瀬に話しだした。


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