俺はお前だけの王子さま
「だけど…凄いチャンスでもあるよね。成長できるし…」


渡瀬は無理やり笑っている。


「私も応援するよ」


悲しい癖になぜか笑う渡瀬に
俺も小さく口元を緩めた。


「サンキュ」


俺の言葉に渡瀬はニッコリした


だけど気持ちは楽にならない。


俺の気持ちはどんどん沈む。


俺は渡瀬に、言わなきゃならないから。





「ちなみに…渡瀬は連れて行かないから」


「………」


「つか…連れていけないから」


「…う…ん…」


小さくうなずく渡瀬。



「あと…この2週間はアメリカに行ってたんだけど」


俺の言葉に渡瀬は俺を見た。


俺は…

自分の目で親父のいう仕事がどんなもんか把握したくてアメリカに行った。


新しい事業は今どんな状況なのか。


どれくらいで軌道に乗せて俺は帰れそうなのか。


そのために今俺はなにを準備しとけば良いのか。


仕事でコンビを組むアシスタントともコンタクトを取ったりしてきた。


とにかく俺は…

出来るだけ現状の把握をしたかった。



渡瀬の為にも――…。



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