俺はお前だけの王子さま
家につくと案の定

暗い日本庭園の向こう側で本家の灯りがまだついていた。


両親はまだ起きている。


俺は渡瀬を連れて本家の玄関をあけた。


俺の帰国を待ちわびるように玄関に出てきた母親は

渡瀬をみて少し驚いた表情を見せた。


「あら…?そちらの方は?」


母親は手を口に当てる。


「俺の彼女」


俺は靴を脱ぎながら答えた。


そんな俺の隣で渡瀬は直立姿勢で挨拶を始めた。


「あ…あの…夜分遅くに突然申し訳ありません…私、渡瀬愛子と申します」


渡瀬はそのままギャグのようにぺこりと直角にお辞儀した。


「………」


緊張のせいか…

山ちゃんから学んだことが完全に頭から抜けている。


そんな渡瀬に母親は少し微笑むと丁寧にお辞儀を返した。


「ようこそいらっしゃいました。どうか気楽になさってくださいね」


母親は親父を呼びに行き

俺と渡瀬は応接間へ向かった。


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