俺はお前だけの王子さま
コトン…

親父は静かにウイスキーのグラスを机に置いた。


「よし、それじゃあそろそろ寝るとするかな」


親父はゆっくりとソファーから立ち上がるとガウンの前を少し整えた。


「渡瀬さん、今日はわざわざ来てくれてありがとう。」


親父の声に渡瀬はハッと立ち上がると親父に頭を下げた。


「こちらこそ…ありがとうございます」


「うん。またいつでも遊びにおいで。おやすみ」


親父は穏やかに言うとそのまま母親と応接間から出て行った。


「………」


また静かになった応接間。


渡瀬は頭を下げたまま俯いて
固まっている。


まぁ…

全く予想していなかった展開でもないけど


親父は渡瀬にも容赦なしか


俺はもう慣れてるけど渡瀬には
キツいよな


俺は立ち上がると俯いたままの渡瀬の手をとった。


「………」


俺は渡瀬の手を引く。


「…とりあえず部屋行くぞ」


無言の渡瀬は俺に手を引かれたまま静かについて来た。






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