俺はお前だけの王子さま
離れの俺の部屋に入るとベッドの横に布団が敷かれていた。


渡瀬の制服は綺麗にハンガーにかけられ荷物は枕元に置かれてある。


山ちゃんだ…


客室も空き部屋もあるのに
わざわざ俺の部屋に布団を用意した山ちゃん


なんか逆に色々やりにくいな…


俺は部屋のドアを閉めると渡瀬をベッドに座らせた。


「俺はシャワー浴びてくるから…渡瀬もパジャマに着替えてろよ。」


「………」


渡瀬は相変わらず俯いたまま
動かない。


俺は渡瀬の頭に軽くぽんと触れてから、そのまま部屋を出た。





軽くシャワーを済ませるとタオルで髪を拭きながら部屋に戻る。


部屋に入ると渡瀬は着替えもせずに座ったままだった。


「………」


渡瀬からよどんだオーラが見える


こんな暗い渡瀬は初めて見た。



俺は持ってきた炭酸水のペットボトルを渡瀬に渡す。


「ほら…」


「ん…」


渡瀬はそれを受け取りながら
ようやく声を出した。


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