俺はお前だけの王子さま
「今日は…ごめんなさい…」


今にも泣きそうなかすれた声


「…なにが?」


「期待に…添えなくて…」


俺は自分のペットボトルの蓋をプシュッと空けながら、渡瀬の隣に座った。


「別に…最初から期待してねぇって言ったよな?」


「………」


「親父がああ言うのも予想はしてたし」


「………」


「まぁ親父はあんな感じだけど…いちいち落ち込んでたらキリないぞ」


「………」


俺は炭酸水を飲むと小さく息を吐いた。


慰めるとか…苦手だ。



「うぅ…ひっく…」


渡瀬は俺の隣で静かに泣き出した。


部屋に渡瀬の嗚咽が響く。


「私…どうしよう…」


「………」


「王子くんも…離れてくし…お父さんには却下されるし…」


「………」


「私…別れた方がいいの…?」


渡瀬は涙をポロポロと流しながら俺を見た。


「王子くん…私に別れを切り出す気でいる…?」


俺を見る渡瀬の唇が小さく震えている。


「私やっぱり…釣り合わない?」


「………」


「なんか…言って…」


そのまま俯いた渡瀬の顔から大粒の涙がポタポタと落ちた。


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