俺はお前だけの王子さま
「………」



俺は自分の頭にかかっているタオルを取ると渡瀬の顔を拭く。


「…とりあえず落ち着けよ」


「や…だよぉ」


俺の言葉が逆効果なのか…

渡瀬は耳をふさぐようにして
余計に泣き始めた。


「話し聞けって…」


「やぁっ…やだやだ」


子供みたいな渡瀬


俺は震える渡瀬の両肩を捕まえた。


「落ち着かなきゃ話せないだろが」


「…う…やぁ…」


渡瀬は目をつぶったまま、いやいやするように首をふった。


俺はそんな渡瀬の顔を両手で挟んだ。


無理やり目を合わせた状態になり渡瀬はようやく俺を見た。


涙で濡れた渡瀬の瞳は不安の色に満ちていた。


俺が別れる気でいるとか…
マジで思ってんのか?



「…別れる気なんてねぇから」


俺は渡瀬の瞳を見た。


「俺は…何を犠牲にしても渡瀬だけは離すつもりねぇから」



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