俺はお前だけの王子さま
俺の言葉に渡瀬は少し考えるようにしてから言った。


「お父さんは完璧を求める人なんだね。」


「つーか…常に向上心を求められる。まじでダルい」


また小さく笑う渡瀬の頭を俺は撫でた。


「渡瀬、今日山ちゃんに教わったこと何も出来てねぇだろ」


「…うん…緊張で…ゴメン…」


「別にそれが普通だし。だけど明日はもうちょい意識してみろよ」


「………」


渡瀬は潤んだ瞳で俺を見た。


「なんか…王子くん今日は特に優しいね」


「あぁ?…つーか、また泣かれたら嫌だし」


「へへ…ありがと」


渡瀬は俺の肩に頭を寄せた。


俺はそんな渡瀬の頭に手をあてると、少し決意を新たに言った。


「アメリカの話だけど…」


「うん…」


「できるだけの事はやるから」


「うん…」


「待ってられるか?」



何年かかるのか…
わからない不透明な未来


少しでも明確にしたくて俺はアメリカに行った。


だけど現状は知れば知るほど、甘くなくて。


そんな未来でも渡瀬が何年間も俺を待ってくれるのか


別に結婚がどうこうの話じゃないけど…


聞くのが正直怖かった。


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