俺はお前だけの王子さま

「渡瀬はやれば出来んだよ。」


王子くんがさらりと言った。


「山ちゃん直々に特訓受けたし…」


「ほう?山田さんに指導を?」


「あぁ。親父らに認めて貰おうと渡瀬なりに夏休み中に特訓してたんだ」


王子くんの台詞に私は耳が熱くなった。


「あの…だけど…全然出来てないんですけど…」


私が俯くとお父さんは言った。


「やらないのと出来ないのは全然違う。出来ないことは努力で出来るようになるからね」


「………」


「渡瀬さんはやらないんじゃなく出来ない人だったんだね。」


お父さんのやわらかな笑みに
頬が赤くなるのがわかった。


涙がこぼれそうになる。

そんな私を見て


「主人は言葉がはっきりしているから怖いわよね?私もたまに泣きそうになるもの」


王子くんのお母さんもニコニコして言った。


そんなお母さんをお父さんがたしなめる。


嬉しい…

嬉しいよ


横を見ると王子くんも小さく
微笑んでくれた。


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