俺はお前だけの王子さま
朝食を終え、王子くんと私がリビングを出ようとした時。


ソファーに座り優雅に新聞を広げていたお父さんが言った。


「昼過ぎからまたしばらくここを離れるよ。」


その言葉に王子くんは足を止めて振り返った。


「また海外?」


「うん。仕事の取引先と今回は少し旅行もかねてEUに。」


「ふーん…」


お父さんは新聞を折り畳みながら王子くんを見た。


「またしばらく会えなくなるが連絡するよ」


「あぁ…」


「学校気をつけて行けよ」


「…そっちこそな」


ぶっきらぼうな王子くんに、
はははと笑うお父さん。


そんなお父さんを背に王子くんはまたスタスタと歩き出した。


え…??

それだけ?

お別れならハグもないの?

お母さんとも話さなくていいの??


1人戸惑う私にお父さんは微笑んだ。


「渡瀬さんともまた会えることを期待しているよ」


「あ…ありがとうございます」


私はお父さんにお礼を言うと
慌て王子くんの後を追った。



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