俺はお前だけの王子さま
準備を済ませると私たちは家を出た。


登校中、私は王子くんに並んで聞いた。


「また離れるのに…あんな淡白な別れでいいの?」


「あぁ?」


王子くんはネクタイに指をかけると、それをグイっと引いてゆるめた。


いつもの少しルーズな王子くんの顔になる。


「別に…年に何回も別れてるから。いちいち感動の別れなんてやってられるかよ」


「そうなんだ…」


なんか…

そんなことを平気でいう王子くんに私の方が悲しくなった。


本当に王子くんていつも独りなんだな。


あんなに広い家で…


「…なんで渡瀬が寂しそうな顔すんだよ」


しゅんとした私を王子くんは呆れるように見た。


「だって…やっぱり私なら寂しいなぁって」


「寂しくねぇよ」


「………」


「マジだって…余計なお世話」


そう言われても

にわかには信じられないよ。


王子くん…強がりだし。


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