俺はお前だけの王子さま
放課後――…


夏休み明けから王子くんと一緒に帰っている私。


この時間だけは王子くんを独り占めできる。


私の密かな楽しみの時間だったりする。


いつものバイバイを言う分かれ道。


王子くんはふと足を止めた。


「今日はスーパーの特売か?」


王子くんはぶっきらぼうに切り出す。


「え??今日は違うよ。特売は火曜日」


「んじゃ今から時間あんだ?」


「いや…スーパーには行かないけど帰ったら晩ごはんは作るよ?」


「…………」


王子くんは小さくため息をついた。


「んじゃ晩ごはんまでは時間あんだな?」


「え?う、うん少しはあるよ?」


ようやく頷いた私に王子くんは愛想なく言う。


「…んじゃ俺んち来れば?」


「えぇ…?な、なんで急に?」


慌てる私に王子くんは呆れたように目を細める。


「なんでって…あんた今日、
誕生日なんだろ」


「そうだけど…」


「なんもねぇけど、せめてうち来いよ」


「…………」


王子くんのぶっきらぼうな優しさに…


私は嬉しくて俯いた。


なんだかんだで…

夏休みを最後に王子くんの家には行っていなかった。


放課後に一緒に帰る以上のデートもしていない。


それだけで十分だったはずなのに


やっぱり王子くんから誘われると、こんなにも嬉しい私もいた。


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