俺はお前だけの王子さま
教室に戻ると徳井くんと目があった。


片手をあげて私に微笑む徳井くんに私も微笑み返す。


徳井くんは友達の輪から抜けて私を手招きした。


「卒業おめでとう」


教室の隅でカーテンをバックに徳井くんが私に爽やかな笑顔を見せる。


「徳井くんこそおめでとう」


私は笑った。


私と徳井くんは、修学旅行の後に少しだけギクシャクしたものの


3年で同じクラスになってからは自然と元に戻っていた。


「王子ってアメリカ行くの本当なのか?」


徳井くんの言葉に胸が少し苦しくなる。


「うん、今日このあと発つの」


「そっか…渡瀬辛いな。」


「ん、でも大丈夫。」


笑う私に徳井くんも小さく笑った。


「もし…なんか困ったことがあれば」


徳井くんはそう言いかけて少し困ったように笑った。


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