俺はお前だけの王子さま
昇降口を出ると私と王子くんは校舎を背景に一緒に写真を撮った。


もうすぐしたら王子くんとお別れしなきゃいけない。


だから今はたくさん笑っていたい。


王子くんと笑い合いたいよ。


「それ、ボタン全部あげちゃったの?」


ボタンが全てなくなった王子くんの制服を指差す私。


「…勝手に取られた」


王子くんはそう言いながらポケットの中に手を突っ込んだ。


そして手のひらを私の前に差しだす王子くん。


「いるかわかんねぇケド一応」


ぶっきらぼうにそう言う王子くんの手のひらにはボタンが1つ乗っている。


「それ…第二ボタン?」


「…だな」


「第二ボタン…わざわざ残してくれたんだ」


「………」


嬉しい…


そんなこと絶対興味なさそうな王子くんが、私の為にわざわざ残してくれた第二ボタン。


「ありがとう…」


私が顔をあげると王子くんは少し照れくさそうな顔をしていた。


「宝物にするね」


「別にたかがボタンだけど…」


たかがボタンだけど

私にとっては宝物だよ…


私は王子くんにもらったボタンを大切に鞄に入れた。



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