俺はお前だけの王子さま
校門の前には一台の黒い高級車が止まっていた。


王子くんの姿を見つけると黒服の運転手さんが扉を開けた。


「そろそろ行かなきゃな。」


王子くんは静かにそう言った。


その一言で胸が急に重たくなる。


王子くんは私を先に乗せると、続いて自分も車に乗った。



バタン、と閉められたドア。


薄くスモークのかかったガラスの窓の外にはたくさんの笑顔の学生が見えた。


きらきら眩しい笑顔…


私と王子くんも、ほんの今まで同じ場所にいたのに。


同じように浮かれた笑顔の中にいたのに…


静かな車内の雰囲気に


急にこの後の別れが現実みを帯びた気がした。



ブロロ―…


静かなエンジン音でゆっくりと走り出した車。


私は振り返って高校を見つめた


小さくなる校舎を見つめて―…


ちゃんと覚悟していたはずなのに…


逃げられない現実のリアルな感覚に急に怖くなった。


どうしよう…


本当に王子くんがいなくなっちゃうんだ――…


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