俺はお前だけの王子さま


―――ドク…ン



その瞬間――…



私は時間が止まったように感じた。





それが誰かなんて―…
すぐにわかった。






ほのかに香る匂いも


放たれる空気も







私は携帯に落としていた視線をゆっくりあげると隣を見た。



高鳴る胸と緊張でうまく息が出来ない。



指が少し震える





「よぉ…久しぶり」



目が合うと少し照れながらそう言った彼。



綺麗に整った顔立ち


私を虜にする黒い瞳


その瞳にかかる黒髪は今日は少し整えられていて


少し照れたように無表情で私を見るその顔は


昔よりも大人の男の顔をしていた。


その全てが私の心を揺さぶる



「王子く…ん…」


その名前を呼ぶだけで…
胸が甘く切なく締め付けられる


王子くん…

スーツ姿がすごく似合ってる。


何度も夢にみた王子くん。


「王子くん…」



その王子くんとやっと逢えた。


いつの間にか私は

抑えきれない気持ちが大粒の涙になって溢れ出していた。


王子くんはハンカチを取り出すとそれを私の頬に優しく当てた。


「…泣くの早すぎ」


呆れたように少し笑ってそう言う

そんな声すらも愛しくて。


余計に涙が止まらなくなるよ…


逢いたくて逢いたくて…


たまらなかった王子くんにやっと逢えた。



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