俺はお前だけの王子さま
「始まる前から泣いてどうすんだよ」


王子くんは笑いながら私の涙を優しく拭う。


「ふ…っ…だって…」


甘い王子くんの瞳に見つめれ、私の胸はまたキュンとたまらなくなった。


王子くんだ…

王子くんがいるんだ。



“逢いたかったよ”そう言おうとした時だった。



合図の音楽と共に神父と水梨くんが入場してきた。


全員が入口を見る。


現れた水梨くんは白いタキシードに身を包んでいた。


薄茶の髪はステンドグラスから射し込む光できらきらしていて


胸元には一輪の花。


整った甘いマスクはまるで本物の王子様が現れたみたいだ。


水梨くん…

すごくかっこいい…

かっこいいよ…!


少し緊張ぎみの水梨くんは入場中、王子くんの姿を見つけると小さく笑った。


そんな水梨くんに客席からは、うっとりとしたため息が聞こえる。



そしていよいよ――…


フッと教会内の照明が消えた。


私の鼓動も速くなる…


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