俺はお前だけの王子さま
「ただいま―」


いつもより早く帰ってきた私にお母さんがリビングから顔を出した。


「あら?今日はもう終わりなの?」


「うん」


出来るだけ平然を装いながらお母さんに対応する。


そして私は自分の部屋のドアをきちんと閉めると恐る恐る検査薬を取り出した。


ドクドクと鳴る心臓を落ちつかせながら説明書を読む。






もし――…



もし本当に妊娠していたらどうしよう。


とりあえず一番最初に伝える相手は王子くんだけど…


だけど王子くんはなんて思うだろう?


この春、向こうの大学は無事に卒業したらしい王子くん。


だけど仕事はまだまだ向こうで頑張っている。




「…………」


私は検査薬を1本出すとそれを服の下に隠すようにしてトイレへ向かった。




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