俺はお前だけの王子さま
どのくらい経った頃か
「最後にもうひとつ報告があんだけど…」
俺は箸を置くと少し改めて言った。
「ん?なんだ」
親父はもう食べ終わり、お茶を飲んでいた。
「俺…今晩、渡瀬にプロポーズすっから。」
後でごちゃごちゃ言われんのはウザい。
渡瀬を安心させる為にも俺は先に親父の了承を得ると決めていた。
俺の台詞に親父は少し目を大きくした。
「ほぉ、そりゃまた急だな。渡瀬さんって学生時代に一度会ったお嬢さんだよなぁ?」
親父は記憶をたぐりよせるように顎をさわった。
「親父が反対しても、俺は渡瀬と結婚すっから。」
俺は静かに断言した。
そんな俺に親父はまた驚きの表情を見せてから、今度は大きく笑った。
「はっはっは、何だか俺が反対するみたいな言い方じゃないか」
「…………」
「まぁ、あのお嬢さんなら良いんじゃないか?」
親父は少し笑いを抑えながら、言った。
「は……?いいのかよ?」
結婚は認められんとか言って、渡瀬をビビらせていた親父。
その親父が予想外にすんなり
OKを出したことに今度は俺が少し驚いた。
そんな俺に親父は少し意地悪な顔をして
「俺は構わんが…プロポーズしてもOKがもらえるとは限んのだぞ?」
「…………」
「なのにもう結婚する気とは…お前随分と余裕なんだな」
にやりと笑う親父。
うざい…
俺は親父の言葉を無視してお茶を飲んだ。
親父はまた笑った。
「はは、まぁ渡瀬さんがどんな風に成長したのかまた会いに来るのを楽しみにしてるよ」
こうして俺と親父は料亭を後にした。