俺はお前だけの王子さま
「…………」


俺は上着から小さな箱を取り出すと、その中から指輪を取り出した。


予定とはかなり違うけど


渡瀬の悲しむ顔を笑顔に変えられれば、それだけで何でも良かった。


それだけで…


「渡瀬…」


俺は背を向けたまま横たわる渡瀬の手に腕を伸ばした。


そして、その細い薬指にそっと指輪をはめた。


薬指はスッとはまる指輪。


サイズはあらかじめ、夏木に聞いていた。


渡瀬の嗚咽が止まる。


「渡瀬…ごめんな」


「…………」


「ごめん。」


渡瀬はようやく俺の方を向いた。


涙で濡れた瞳は戸惑いながら、俺を見ていた。


俺はそんな渡瀬の涙を拭ってやる。

そしてゆっくりと渡瀬の体を座らせた。


ベッドの上で向かいあう俺と渡瀬。


「実は俺、今日付けで日本に戻って来た」


俺の言葉に渡瀬の大きな瞳がさらに大きくなる。


俺はそんな渡瀬の瞳を見つめた。


「もう二度と離さねぇから…」


「…………」



「だから俺と…結婚して欲しい」




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