俺はお前だけの王子さま
「…たまには顔を見せろと言っとけ」
「えぇ?」
俺の言葉に、愛子は携帯から目を離して俺を見る。
「なによ?あの子先月、お盆で帰って来たところじゃない」
「…………」
「ふふっ…もう、寂しいなら自分で会いたいって言えば良いのに~」
愛子はクスクス笑いながら体を起こして俺の隣に座った。
そして、
俺の肩に頭をコツンと寄せる愛子。
広い屋敷はシンと鎮まりかえっていた。
「なんだか賑やかだったのに…いきなり二人きりになっちゃったね」
薄暗い部屋の中
ベッドサイドの灯りが愛子の微笑みを優しく照らす。
愛馬は嫁ぎ、冬馬は仕事で海外に出ていった。
「孫が出来たりなんかすると、きっとまた賑やかになるのかな」
「そうだな。」
少ししんみりとした、それでいて穏やかな時間。
「でもあなた、お爺ちゃんになっちゃうんだよ?」
愛子は少しいたずらな顔をした。
「お前だって婆さんだぞ」
「え~その響きはやだなぁ…、自分の歳だって未だに信じられないし、気持ちはまだまだ20代なのに」
愛子は俺の肩に頭をつけたまま両手で顔を覆い隠した。