俺はお前だけの王子さま

本気になっちゃった

暗い静かな住宅街。


街灯の明かりに照らされて
俺とヒロキは歩いている。


「まじ旨かったなぁ~」


すき焼きの余韻を残しつつ

ヒロキは心底、楽しかったというように呟きながら空を見上げた。


こういうヒロキを見るのは、
どれぐらいぶりだろう…


「…良かったな」


俺はヒロキに言った。


俺の言葉に
ヒロキも俺を見た。


「春のそゆ顔…久しぶりじゃん」


ニヤリとするヒロキ


「………」


ちっ…

俺は無表情に戻る。


俺よりもお前こそ
そんな顔久しぶりだし。



「…なんかさぁ~」


ヒロキはもう一度上を見上げた。


「俺久しぶりに…本気で楽しかったかも…」



俺はヒロキを見た。


「一緒に料理してる時とかさ、俺…駆け引きとか忘れてたんだよね」


ヒロキは続ける。



「女とか…もう遊びでいいやって思ってたけど。渡瀬さんは遊びにしたくなくなった」



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