俺はお前だけの王子さま
例のボロいアパート。


「相変わらず汚ねぇ…」


俺が壁際に自転車を止めると
自転車の方がよっぽど高級で、不似合いな感じがした。



カチ…カチ…

チャイムを押しても音が鳴らない。


ちっ…

意味ねぇだろ…


仕方なく俺は
渡瀬の家の扉を叩く。


「はーい」


中から扉が開けられ渡瀬が顔を出した。


「え…?王子くん?」


渡瀬は驚きの眼差しを俺に向けた。


「入るぞ」


「え?」


俺は渡瀬を押してズカズカと中に入った。


相変わらず床がミシミシなる上に狭い…。


「親と弟は?」


「あ…お母さんは仕事だし勇気はサッカーだよ」


「ふーん」


ギシギシ…


俺はちゃぶ台に座った。

< 77 / 558 >

この作品をシェア

pagetop