俺はお前だけの王子さま
渡瀬はお盆に熱いお茶を持ってきて俺の向かいに座った。


「何か用?」


「…………」


俺はお茶をすすってから、制服にエプロンの渡瀬を見た。


「修学旅行…そんなに金がないのかよ?」


「………ない訳じゃないけど」


「じゃあ来たくないのか?」


「…………」


俺は頬杖を付いて渡瀬を眺める。


渡瀬はちゃぶ台に目線を落としながら言った。


「お母さんに13万も言えない…言うぐらいなら別に行かない方が良い」


「…なんで言えないんだよ」


「だって…今以上に残業増やすに決まってるもん」


渡瀬の伏せた睫毛が揺れた。



「お前は…行きたくないのかよ」


「……別にいい」


別にいいって…


俺は渡瀬がたまに見せていた
寂しそうな顔を思い出した。


ヒロキと夏木を妬いてるんだとその時は思ってたけど…


「嘘つくなよ」


コイツは行きたいんだ



だけど…
渡瀬は俺を見た。



「王子くんには…私の気持ちなんて分からないよ」


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