俺はお前だけの王子さま
昼休みの後
トイレに向かった渡瀬。


渡瀬がトイレから出てきた所を俺は強引に掴まえた。


「え…?ちょっ!?」


「黙って来い」


授業が始まるチャイムを無視する。


俺は渡瀬の腕をひっぱり屋上前まで連れてきた。


屋上の分厚い扉の前で
渡瀬の腕を解放する。


「っ…もう王子君っていっつも強引…」


文句を言う渡瀬。


そこで初めて俺が渡瀬を見ると睫毛が少し濡れていた。


トイレで泣いたのか?


「マジで行かないんかよ」


泣くほど行きたいくせに…


「だから…前に言ったでしょ?」


困ったように笑う渡瀬。


そんな笑い方されたって
全く納得いかねんだよ…



「渡瀬が行かない事、親は知ってんの?」


渡瀬は首をふった。


「…行くふりして適当にやり過ごすつもり」


やり過ごすって…


梅雨時期に野宿でもするつもりかよ…


俺はため息をついた


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