俺はお前だけの王子さま
「お前…弟がサッカー諦めたらどう思う?」


「え?そんなの…嫌…勇気には不自由させたくないもん…」


そこまで言って
渡瀬は俯いてしまった。


「…だったらなんで、わかんねーの?」


「…………」


「お前の親も同じなんじゃねーの?」


「…………」


「お前を行かせたいんじゃねーか?」


「…………」


俯いたままピクリとも動かず
無反応な渡瀬


「…おい?」


聞いてんのか?


俺が腰を屈めて渡瀬の顔を覗き込むと…



「………っぅ……」


渡瀬は唇を噛みしめて
声を押し殺して泣いていた。



「…ごめ…」


渡瀬は謝りながら隠すように涙を拭った。





「………うぅ…」


そのまま渡瀬は泣いてしまった。



「…………」


俺は…

ただ見ているしか出来なかった。






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