俺はお前だけの王子さま
―――…



しばらく泣いて
渡瀬は落ち着きを取り戻した。


そしてポツリと話だした。


「お母さん…去年一度、過労で倒れてるんだ。」

「………」


「お母さんの気持ち分かるからこそ、絶対に無理するの分かるから…私やっぱり言えない…」


「………」


「でも王子君が私をちゃんと見ててくれて、意外だったけど嬉しかった。」


渡瀬はまだ濡れた目で
俺を見て笑った。


「ありがとう。」


「…………」



俺は…


結局どうすることも出来ないのか



「授業さぼっちゃったね…次は戻らなきゃ」


さっきの今でもう毅然と
平然を装おう渡瀬。



俺はそんな渡瀬の横顔を見ていた―…





< 87 / 558 >

この作品をシェア

pagetop