とまった夏の日(仮)
【第一章】

偽り ―ITSUWARI―

「公園にいるから、今から来て~」


 親友の愛子<アイコ>に呼び出された私は、赤い自転車を走らせて風を切ってぐんぐん街を駆け抜ける。

頬にあたる風が冷たくて、みるみるうちにピンク色に染まっていくのを感じながら、茜色に染まる空を仰いだ。


 お菓子持ってくれば良かったかなぁ。そう思いながら、愛子との“いつものおしゃべり”を楽しみに自転車を走らせていた。


公園の入口であるグランドを勢いよく曲がりきると、木陰に愛子の姿を見つける。


あれ?
小さく手を振る愛子のそばには他にも誰かいるようだ。


キィー!


思わず耳をふさいでしまうような、大きな音を立てて止まった自転車。


「お待た……せ……?」


私は言葉を詰まらせる。


「……おう」


「すみれ早かったね!」


愛子を待たせまいと急いでやってきた私は、ハァハァとした息づかいで、どこかぎこちない愛子たちの挨拶に少し戸惑う。

これまでの愛子との待ち合わせにはない雰囲気が漂っていた。

自転車から降りるのも忘れてただ驚く。
思いも寄らない顔ぶれだったからだ。
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