あの子のために雪は降る
抱き上げたすずめは、ぐったりとしたまま虚ろな目を開けた。


「お兄ちゃん…あそこにサンタさんいるよ…。お願いした…?」


そう言って指さした先には、クリスマス用に壁に飾り付けられたサンタの人形があった。
町の至る所に聖なる夜を祝う飾り付けが溢れている。
すずめは混濁した意識でそれを本物だと勘違いしたのだろう。


「おい!しっかりしろ!すぐに病院連れて行くからな!!」


俺は店を出るとすずめを抱いたまま病院へと走った!

病院はここから近い。救急車なんか待つより走った方が早く着く。
俺は息が切れて肺が破けそうになるまで走った。


「チッ!まともに走る事も出来ねえのか!タバコなんざ今日限りで止めてやる!」


ゼーゼーと荒い呼吸を響かせながら、俺は病院の緊急外来へとすずめを運び込んだ!


「コイツを見てやってくれ!!急に倒れたんだ!!」


俺は受付の看護師に向かって状況を知らせた。

すると看護師はテキパキと連絡を取って、仲間を呼んでくれた。
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