あの子のために雪は降る
駆け付けた看護師は、名前は知らねえが移動式のベッドみたいな奴をガラガラ引いてやって来た。

そしてすずめをそこに乗せてやると、看護師の独りが驚いた顔で叫んだ。


「すずめちゃん!?どうして!?」


口に手を当てた看護師は、仲間に急いで検査室に向かうように指示を出して俺の元へやって来た。


「あなたはすずめちゃんの知り合い?家族かしら?」


「いや、赤の他人だ。看護師さんアイツの事知ってんのか?」


俺は訳が分からないままそう問いかけた。
看護師はゆっくり頷くと質問に答えてくれた。


「あの子は昨日病院を抜け出したの。
夜に捜索願いを出したんだけど、最も最悪な形で帰ってきたわ…。」


「最悪?アイツは別に何も悪い事はしてないぜ?」


「…詳しく教えて。あの子の体調がおかしくなったのはいつから?怪我はしてない?」


看護師は真剣な目つきで俺を見ると、まるで尋問するような強い言葉で聞いてきた。


「異変に気付いたのは今さっきだよ…。怪我は足に擦り傷がある。昨日泥道でコケたからな。」


それを聞いた瞬間、看護師は目を見開いて硬直した。
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