あの子のために雪は降る
俺はたかがかすり傷一つで大げさな奴だと思いながら看護師を見ていた。


「それだどうかしたのか?たかがかすり傷だろ?唾付けときゃ治るだろ。」


「普通ならね…でもあの子にとっては致命傷になりかねないのよ!」


「何でだよ。今までケロッとしてたぜ?」


俺はアホみたいな話信じる気にはなれずに耳をほじりながら聞いていた。


「あの子はね、生まれつき抵抗力が低いのよ。病原菌に対する免疫がほとんど無い、免疫不全症候群っていう病気なの。」


「あん?めん…なんだそりゃ?」


この時の俺はかなり間抜けな顔をしていたに違いない。


「風邪や破傷風にかかるだけで死に至る病気よ。
ただでさえ薄着で抜け出して体力が低下してるっていうのに…、かなり危険なの。」


俺はそれを聞いた瞬間初めて事の重大さを認識した。

怪我なんか毎日するし、風邪引いて鼻水出てても遊び回ってた俺にとって、全く予想できない答えが返ってきたからだ。


「んな…じゃあ…すずめの奴死んじまうのか!?そんなにやばいのかよ!?」


俺は看護師の肩に手を置いて必死になって聞いた。
ぬいぐるみを抱いてニコニコしてるあいつの顔しか思いつかなかった。
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